2019年11月9日土曜日

わたしたちが食している「いのち」とは

アジア学院スタディツアー 報告

10月20日(日)
台風が続いた10月でしたが、この日は久々に天気に恵まれ、栃木県那須塩原の「アジア学院」を訪問してきました。

東日本大震災以来、さまざまな活動をおこなってきたACTですが、今年は震災と私たちの生活を「食」から考えるということに焦点をあて、スタディツアーを企画しました。

「アジア学院」は、アジア、アフリカ、太平洋諸国などの途上国で活動する、”草の根”の農村指導者が学び合う学校。学院の共通語は英語です。
(アジア学院ホームページ http://www.ari-edu.org/

『共に生きるために That we may live together』は学院が大切にするモットー。
さまざまな工夫が凝らされた 古民家チャペル

独自の文化、言語、宗教をもつ人々が互いを尊重し、助け合って生活しています。

東日本大震災後に建てられた古民家風のチャペルの内装も、学生たちが意見を出し合い、皆の前でメッセージをする人が一番低い位置に立つ造りになっており、誰かの上に立つ指導者でなく「仕えるリーダー」を表しているそうです。
「仕える指導者」「フードライフ」「共同体形成」が3本の柱

広大な敷地では60種類もの作物を育て、ニワトリ、豚、魚、ヤギなどもいます。
調味料以外はほぼすべて自給自足。
自ら育てた命を自らの手で調理しています。
また、パン・おから・魚のあらなど、地域でムダになっているものをもらってきて家畜の飼料にするなどの工夫もされています。

顔をだしてくれたヤギさん

有機農業かつ無農薬栽培で作物を育てているため、農薬ではなくお酢・トウガラシ・焼酎等を漬けた”ストチュウ水”などで虫が寄りづらくしているそうです。

識字率がただでさえ低い国では、他言語で書かれている農薬の使い方はなおさら読めず、どのような成分が入っているか知るために”舐めてみる”ことが伝承とされているという衝撃のお話も。ここにきて、それが「おかしい」ということに初めて気づくそうです。

散策しながら豚舎まで来た時、スタッフの山下さんから質問が。

「皆さんが普段食べている豚、何歳だと思いますか?」
想像もつかない質問でした。

答えは、0歳。
生まれて半年で100kgほどになる赤ちゃん豚を、私たちは普段食べている。
家畜たちが殺されることによって、自分たちは生きている。
美味しいサンドイッチ、特製にんじんジュースで休憩

命あるものを食べ物としていただいていることを、もっと真剣に考えなくてはいけないと考えさせられる事実でした。

ある大学生が話していたという
「この20年、色々な命を犠牲にしてきた。だから、自分を大切にしなくてはいけない」
という言葉が印象に残っています。



震災後に建てられたアジア学院ベクレルセンターも案内していただきました。
この白い容器に食品を入れ

福島第一原発から110km離れているにもかかわらず、当時の風向きと降雨によってホットスポットと呼ばれる場所となってしまったアジア学院。
見えない、におわない放射能の不安から、食品の放射性セシウムの安全基準は国の定めたものではなく自主的に37Bq(ベクレル)/kgと決め、測定器で地域の食べ物を測定し続けてきました。

白い容器をこの機械に入れ測るそうです
野菜やお米は基準を大きく下回って安心を得られるようになってきた現在も、キノコ類や山菜類は基準値を超えることもあるので今後も注意しなければならないと言います。

放射能汚染が生む、人とのつながりの分断についてもつらい現実があることをお話しいただき、数値が低くなってきたからと言って決して忘れられる問題ではないと痛感しました。

多くの学びが至るところに転がっているようなこの素晴らしい学校で、充実した時間を過ごすことができ、恵まれた一日でした。

誰もが日々かかわる「食べる」ことについて、今後も向き合っていきたいものです。
食育、いのちの学びを体感されたい方、
ぜひアジア学院を訪問してみてはいかがでしょうか?


(YMCA ACT 茂澤)

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